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国際

ドバイで開催された気候変動会議COP28:「10年ですべての化石燃料から脱却」で合意、温室効果ガスは35年に6割減へ

アラブ首長国連邦・ドバイで、14日間の協議を経て閉幕したCOP28。中央が、スルタン・アル・ジャーベル議長(より)

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれていたCOP28(第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が13日、会期を1日延長して終了した。世界全体での温室効果ガス排出量削減の進捗状況を科学的に評価する、初の「グローバル・ストックテイク(Global Stocktake:GST)」の結果を踏まえ、約200の国々の間で、2050年までに温室効果ガスの実質排出ゼロを目指すため、「およそ10年間で化石燃料からの脱却を加速する」と明記した成果文書を採択した。14日間の協議のたまものは、果たして今後の気候変動対策の基盤としてどの程度の実効力を持つのだろうか――。(廣末智子)

グローバル・ストックテイクとは、パリ協定が定める「地球の気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える」という目標達成に向けた進捗状況を、世界全体で把握するための仕組み。今回の初実施に当たっては事前に約1年をかけて、パリ協定の長期目標が世界全体でどの程度達成されているかを科学的見地から検証するプロセスを踏み、その結果、1.5度目標の達成には世界全体の温室効果ガス排出量を2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%削減する必要があり、各国が目標強化に向けて早急に議論を開始すべきことが打ち出されていた。

化石燃料の「段階的廃止」の文言を入れるかどうかで駆け引き

これを受けて始まったCOP28の交渉は、「化石燃料の段階的廃止(phase-out of fossil fuels)」という文言を入れるかどうかを焦点に、各国の駆け引きが難航。結果的に、産油国のサウジアラビアなどの反対で、段階的廃止という言葉は使わないものの、成果文書には「化石燃料から脱却する(transition away from fossil fuels)」の表現を盛り込み、「科学的知見に基づき、2050年までにネット・ゼロを達成するために、公正で秩序だった公平な方法で、エネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却を図り、この重要な10年間でその行動を加速させる」と明記した。

化石燃料を巡っては、2021年のCOP26で、最も多くの二酸化炭素を出す石炭火力に限定した「段階的な削減」に初めて合意。続くCOP27では、その対象を石油・ガスも含めた化石燃料全体に広げるよう、島しょ国やEUなどが主張したが、成果文書はCOP26の表現を踏襲した。その点において、COP28が「すべての化石燃料」に言及したことの意味は大きい。しかしながら、「脱却」という言葉は明らかに「廃止」を意味しておらず、2035年までに温室効果ガス6割減という大枠は示したものの、結果としてどう削減していくのか表現に曖昧さが残り、今回の成果文書を「玉虫色の決着」と評するメディアもある。

2030年までに太陽光や風力など再エネを3倍に

今回の成果文書でもう一つの大きな柱は、再生可能エネルギー拡大の必要性を明記したことだ。2030年までに太陽光や風力といった再生エネの設備容量を3倍、省エネ改善率を2倍に▷CO2の回収や利用、貯留(CCUS)といった削減策の講じられていない(unabated)石炭火力の削減へ努力加速――などの項目も盛り込まれた。また化石燃料を代替する手段の一つとして、初めて「原子力」が挙げられたことも注意すべきことだろう。

「損失と損害」基金始動も 暫定的に世界銀行が4年間運営

このほか、大きなアジェンダの一つとなっていた、温暖化の影響を受ける途上国の「損失と損害(ロス&ダメージ)」に対する資金支援のファンド設立については、初日の全体会合で、暫定的に4年間、世界銀行の下で運営し、先進国に対して基金への拠出は義務付けず、新興国にも自発的な拠出を促すことなどが決定した。

基金への拠出は決定直後に開始され、議長国であるUAEが1億ドル(約150億円)、欧州連合(EU)が計2億5000万ユーロ(約360億円)、米国は1750万ドル(約25億円) 、日本は1000万ドル(約15億円)など、13日までに総額7億米ドル以上が拠出されたという。

さらにCOP28では、後発開発途上国基金(Least Developed Countries Fund)や特別気候変動基金(Special Climate Change Fund)などに対しても、先進国から新たな資金拠出が発表された。しかし、これらの資金拠出誓約について、グローバル・ストックテイクは、「途上国のクリーンエネルギー移行や、気候変動への適応努力を支援するために最終的に必要とされる数兆ドルにはほど遠い」と指摘。依然として「多国間金融アーキテクチャーを改革し、革新的な資金源の確立を加速させること」が求められている。

1.5度目標達成に向け、各国が実効性のあるプロセスをどう築くか

国連気候変動枠組み条約のサイモン・スティール事務局長は閉会スピーチで、「ドバイで化石燃料の時代に終止符を打つことはできなかったが、この結果は終わりの始まりだ。今、すべての政府と企業は、これらの誓約を遅滞なく現実の経済的成果に変える必要がある」と述べた。

来年2024年には各国が2035年の削減目標を提出しなくてはならない期限が迫る中、COP28の成果を各国が自国の気候変動対策にどう反映させていくのか――。成果文書には、各国の次回の削減目標の提出時に、「どのようにグローバル・ストックテイクからの結果を考慮したかの説明が必要」という文言も入った。「すべての化石燃料からの脱却」といった曖昧な言葉に惑わされず、1.5度目標に向け、各国が実効性のあるプロセスをどう築いていくかが注視される。

次回以降のCOP日程については、COP29(2024年11月11-22日)がアゼルバイジャン、COP30(2025年11月10-21日)がブラジルで開かれることが決まった。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年10月からSustainable Brands Japan編集局デスク兼記者に。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。